食費か暖房費か

  極限を生きるとは、どういうことだろうか。貧困や災害の映像などから考える。最近、ウクライナ情勢のせいで光熱費が世界的に上がっている。それも5倍だとかそれ以上だとか、ヨーロッパの国々の値上がりがすさまじい。イギリスで光熱費の高騰で「食事をとるか暖房費をとるか」と迫られているぐらい家計費を圧迫しているという。

 最初はぴんとこなかった。しかし、ユーチューブで札幌に住む人の動画で具体的に分かった気がした。その動画の概要は、「体調を崩して手取り月8万円まで減少。その中から家賃3万5千円を支払い、残り4万5千円。冬が来るまでは、何とかやりくりしていたが、今年の電気代の高騰で高騰で暖房費に3万円以上かかり、食費に2千円しかかけられず、毎日の食事は1日1食。腹持ちがいいから主食はドラッグストアで安売りしている5キロ1250円のお米。おかずは完全栄養食の卵一つ。あと業務スーパーで買ったお徳用パックのウインナー1本。目玉焼きとウインナー。時々、コンビニのカット野菜。その生活を3か月近く続けたところ体重が10キロ減った」というもの。

 食費についていろいろ考えた時期がある。人間どこまで食費を削れるか、を。自分の試算なら5千円。主食が米3キロと小麦粉2キロで1000円。タンパク質とミネラルがスキムミルクと納豆でまず1500円。野菜が人参4本と玉ねぎ4個とキャベツ1玉、青菜4束で1000円、コーヒーと調味料、卵で500円。めざし、もしくは鯖缶で500円。あと少しばかりの補てん。肉なのか嗜好品なのかわからないけれどそれで500円。これなら1年過ごせるかなと。もちろん、過ごしたくはないが。やっぱり、1万円ぐらいは最低欲しい。

 話は戻る。暖房費が食費を圧迫することがあるのだ。北海道の冬は厳しい。私の住んでいる関西では、日が上がっているうちは電気ひざ掛け、日が暮れるとさっさと布団にもぐりこむ生活なら月々500円済むだろう。しかし氷点下まで温度が下がる北海道では全体的に温めないと低体温からの凍死に至ってしまう。寒さが厳しいということはそういうことなのだ。断熱効果が乏しい築年数のボロアパート。オマケに暖房は電気のみという規約なら3万円かかってしまう。関西に住んでいる自分には想像のできないことだった。乏しい食べ物でも何日かは持つ。しかし、低体温では即刻、死につながることがある。

 

 昔、北海道で餓死した人の話があった。ひょっとして同じ状況だったのかもしれない。春になって暖房費がかからなくなったら食事にお金をかけることが出来る、そこまでの我慢と思って我慢していたら体のほうが我慢できずに死に至る。救えたかもしれない極限状況というものがありうると思う。