堤防の花

 毎日、通勤の時に堤防を自転車で通る。高校の通学路のため道は舗装され、なおかつ車両侵入禁止。自転車をこぐには最適である。特に早春は気持ちがよい。
 菜の花が咲きだす。堤防が少しづつ黄色に染まっていく様子はまさしく視覚する春だ。菜の花畑の観光名所はたくさんある。しかし2月少しづつ夜明けが早くなり、その頃からぽつぽつ咲き始め、段々暖かくなるにつれて堤防が黄色に染まる様子を見るのは地元ならではの贅沢だ。

 菜の花と共に野の花が咲きだす。普段は雑草と呼ばれているが小さな花を咲かせる頃はいとおしい。
 菜の花と同じく黄色い色のタンポポ。菜の花と違いこちらは地面に張り付く。タンポポって幼稚園のクラス名によくあるな。だいたい年少組。大きくなるとゆり組やさくら組など背の高いものに変わっていくのだ。根っこが太くて乾燥して煎じたらコーヒーの様な味わいになるらしいが試したことはない。
 オオイヌノフグリもかわいい花だ。青くてとても小さい。あまりにも小さすぎて花瓶にさす事もできない。咲いた後にできる実の形が犬のふぐりに似ていることからつけられたそうだが、ふぐりの意味を知ったときは思わず赤面した。
 カラスノエンドウの花もいい。この花は赤紫色だ。子どもの頃、こんなに小さいのにしっかり花も実もえんどう豆と同じ形をしているのが面白かった。これよりまだ小さいスズメノエンドウという草もある。こちらは空色に近い紫色だがより小さい。カラスより小さいからスズメである。
 それから咲き始めるのが、クローバー。オオイヌノフグリカラスノエンドウを見てきた目には大きく感じる。パンジーなど比べるとずっと小さいのだが。四つ葉の葉っぱをよく探したな。四つ葉のクローバーを探しているうちに五つ葉が見つかったりする。五番目の意味ってなんだろう。そんなことを話したりした。クローバーで首飾りを作って遊んだのもいい思い出だ。
 最後に咲くのがひめじじょんだ。こちらは背が高い。マーガレットのように外側が白色で真ん中が黄色だがもっと小さい。見た目は美しいが花瓶に生けると細かくて小さい花がパラパラとこぼれ落ちる。もともと外国から観賞用に輸入されたものが自生しだしたらしいが、扱いにくかったのかもしれない。

 毎日少しづつ野の花の咲く様子の変化で春の季節を感じ取ってゆく、毎年ながら素敵な日々だ。