プラネタリウムの思い出

  与謝野蕪村の俳句に「菜の花や月は東に日は西に日は西に」という一句がある。東の空に昇ったばかりのまん円の月と、西の山に沈みかけようとする太陽、そのふたつの光が花畑を照らしだしています。日の入りと月の出が同時なのは、陰暦でいうと十五日前後の光景だ。対句表現もうまく使っていると本にある。春宵一刻値千金の言葉を連想させる名句だ。

 大阪市立科学館プラネタリウムに行った時、この時の月の形はどの形か、そしてなぜその結論にたどり着いたのか考えていこうというテーマがあった。俳句を少しでも知ってる者なら、ただ月と書いている場合は満月を指すのだがプラネタリウムの席の大半を占める小学生にはそのような基礎知識などない。私も当時は知らなかった。全員知らないという前提で話は進められた。
 ポイントは菜の花、時期は三月であること。そして時間は太陽が沈むとき。その二つを手掛かりに考えていこう、それは天文学から割り出すことができるのだ。難しい説明は忘れた。ただ聞きなれた名句を科学的に分析するという内容が斬新的だった。その時に見られる星座の神話の説明をするのが定番だからだ。

 この時が一番おもしろかったがこれ以外にもプラネタリウムにはまったことがある。惑星を知りたいと思ったからだ。明けの明星、宵の明星で有名な金星。真夏にさそり座のアンタレスの近くに赤々と光る火星。その二つは知っているが、その他の惑星は見つけることができなかった。特に木星は、一等星以上の輝きを持つ星なのに特定することができずに悔しかった。
 何度か通った。金星は、朝夕に地平線ぎりぎりのところにしか出ないのに木星は時間を問わず、そして金星より高い位置に光っていること。真暗の星空でひときわ輝いている星があれば木星と思ってよいだろう。詳しくは天文年鑑で確かめればよい。
 土星も肉眼で見れることを知った。そして自分の肉眼で見たときは感動した。あのわっかのある土星である。望遠鏡を使うと素人でもわっかを確認することができるそうだ。
 水星も肉眼で見ることは可能らしい。実際プラネタリウムの解説者に自分で撮った水星の写真を見せてもらった。しかし水星は光の輝きも弱く、また金星と同じくまだ明るさの残る朝夕に地平線ぎりぎりしか出ないため、なかなか肉眼で見るのは難しいとのこと。

 ぼやっと夜空を見上げる。プラネタリウムや本で調べた惑星や星座を探す。晴れた日の夜空は美しい。