ワープロ教室に申し込む

駅前にあるタイプ教室に足を運んだ。パンフレットを見る。英文タイプのコースの他に和文タイプコースとともにワープロコースがあった。これだ。初級コース、中級、上級とある。もちろん初級だ。細かいことは忘れたが確か2ヶ月週2回で5万円ぐらいだったと思う。今から思うと1回2時間の授業が8回、1時間当たり3千円以上もする高い授業料だったが、時はバブル時代、全てにおいて単価が高い時代だ。まして時代の最先端の機械の扱い方を教えていただけるのである。私は、なんの躊躇もなく当時の私の月給の3分の1の値段である5万円の月謝を支払った。
ワープロ教室初日。細身で眼鏡をかけたインテリ風の若い美人の先生が私を出迎えた。まず、機材の説明。3種類の機械が置かれていた。私が買ったあの忌まわしきワープロと同じ簡易型。そして、私が欲しかったオフィスで使用されている型、そして、見たこともない大きな機械があらわれた。使用する部分はノートパソコンでないパソコン、デスクトップパソコンのようだが、違うところはイメージとしてスーパーコンピューター『京』のようなものが1メートル四方の大ききで鎮座しているというか要するに業者の人でしか動かせないしろものである。まさしくワープロは英文タイプの形をしているコンピューターなのである。私は、あまりの大きさに呆然としていると、先生が『これは世間一般に出回り始めてた初期のころのもので、50万円以上したのよ』とおしゃった。キーボードだけでなく、タブレット端末で使うタッチペンのようなものもあった気がする。確かあいうえお表から字を拾ってくる仕組みだった気がする。もう少し待てば、こんな高いものを買わなくて済んだのに、と言いたげな口ぶりだった。そりゃ-これだけ初期費用をかければ、授業料も高くなるだろう。私は今書きながら、あの機種と同じものはワープロ企業博物館ぐらいしか置いてないだろう。たぶん簡易型と一緒に『黎明期のワープロ』として並んでいるかもしれない。『プロジェクトX』のBGMと共に。
広い教室の中では、英文タイプを練習している生徒さんに混じってまるで編み機のような大きな和文タイプの練習をしている生徒さんもいる。さあ、私も頑張ろう!