エジプトに行きたい

 人生で一番行ってみたい国、それは小学生のころから50年近くたっても変わらない。私のあこがれの国、それはイギリスでもフランスでもアメリカでもない。行ってみたい国、それはエジプト。エジプト文明の遺跡を見てみたいのだ。ピラミッドにスフィンクス、ああ書いているだけで心が躍る。

 

 いつからエジプト文明に心を奪われたのかわからない。小学4年生のころ、考古学という学問があることを知った。そして古代文明も。掘っていくと土器などが出てそこからその時代の光景を巡らす。ワクワクした。もちろん、日本の縄文土器前方後円墳などにも魅力を感じたが、それ以上にエジプト文明は魅力的だった。何せ大きさが違う。なんだ、あのピラミッドやスフィンクスの大きさは。そしてミイラ。何千年前の肉体が保存されているという事実。ツタンカーメンの遺品や壁画の絢爛さ。父親に買ってもらった「ツタンカーメンの秘密」という発掘物語に心ときめかした。その頃の夢は考古学者だった。発掘調査という仕事につければどんなに魅力的だろうと思った。

 

 それから大学に行くこともなく私の夢はついえた。でも考古学は好きで、博物館でエジプト文明展があるたびに出かけた。本物の包帯でぐるぐる巻きになったミイラ、ガラスでできた宝飾品、エジプト展に行くたびにときめいた。

 

 エジプト文明を思うたびに心ときめく。でもついこの前まで一生行くことはないと思っていた。エジプトは砂漠の町である。そう灼熱の太陽が照り付ける気温の高い町である。当方、かなり重症の自律神経失調症である。体力がないのだ。この体力で灼熱の土地に行くことは無理だとあきらめていた。

 しかし、朗報が舞い降りた。エジプトは砂漠地帯だが赤道直下ではない。四季があるのである。11月ごろに行けば気温は日本の夏レベルだという。それならば体力のない私にも行けるのではないか。そして私の体力のほうもだんだん回復してきた。いけるかも。あとは金銭面。格安ツアーなら30万円からある。お小遣いを含めて50万円。絶対、、無理ではない。ということは絶対行ってやる。

 

 目標は70歳。月々三千円貯めると可能なのである。無駄遣いなどしてられるか。意地でも行ってやる。考古学者の夢は破れても本物のピラミッドを見たい。その夢だけは残っている