ミニマリストという生き方

 お片付け動画と節約動画を見ていると、二つの動画に共通してよく出てくる言葉がある。それが『ミニマリスト』である。「ミニマリストの動画が片づけのヒントになった」とか「ミニマリストを実践して物を減らして今までより小さな家に住むことが出来てその結果、家賃を下げられた」など。

 『ミニマリスト』最小限の物だけに囲まれて過ごす生活。合理的ですっきりした生活である。例えばビジネスホテルで1週間過ごすイメージか。何十年も前に買ったお土産の北海道の鮭をくわえた木彫りの熊の置物や、牛乳パックに千代紙を貼って作った頂き物の鉛筆立てとか、そういったたぐいの物のは一つもない。食器も社員食堂で使われるものをワンセット。極めている人は、コーヒーもお茶も同じコーヒーカップで飲む。パソコンとスマホがあるのでテレビやCDラジカセはない。本も図書館で借りたり、買っても読んですぐにメルカリで売るので手元に本はない。ゆえに食器棚も本棚もない。ほとんどの料理をガスコンロで済ますため、炊飯器や電子レンジ、オープントースターといった今の世の中で必需品とされている調理家電もない。ミニマリストを実践している人の部屋は、ほとんど1ⅮKだが驚くほどスッキリしている。

 こんな生活もあるのか。目にうろこである。私の生活はその逆で、これでもかというぐらいごちゃごちゃしている。反省した。少し見習わなければと思った。目を付けたのはオープントースターである。朝、夫の朝食用のトーストとお正月にお餅を焼くぐらいしか使わないのにけっこう場所を取る。ガスコンロに付いている魚焼きグリルでパンも焼けるらしい。まず私は魚焼きグリルを匂いがなくなるよう重曹を入れた熱湯に付けて徹底的に洗った。そしてパンを焼く。存外、難しい。焦げ目がうっすら付いてから、焦げ焦げになるまでがあっという間である。丁度いい焼き色を見はらかうのが難しい。焼いている間ガスコンロに付きっきりである。さように苦労したのに一週間後、夫に言い渡されたのは「ガスコンロで焼いたパンはぱさぱさしてまずいから元のオープントースターで焼いてくれ」と。ああー。せっかく苦労したのに。毎日の事だから、少しでもおいしい方がいいのかな。別に我が家のオーブントースターはアラジンとかディロンギなどの高級品ではない。普通の廉価なものである。

 でも、毎朝この忙しい時間にガスコンロとにらっめこすることもないか。オープントースター復活である。不必要なものは捨て活をする。だいぶスッキリしたが、自分の生活とミニマリストの生活は異次元のものだなあ、とつくづく実感した。